「あなたの質問に答える前に、一つ聞きたい。悠治の両親のこと、どのくらい知ってるの?」
「交通事故でいなくなり、その日は、14年前のバレンタインデー、あっていますか?」
「基本的に間違いないわ。そのほかは?」
「悠治くは、両親にひどい恨みを持っているらしい。その恨みの理由は分からないが、雪枝さんに知られたくないみたい」
「へぇ、恨みを見せてもらったのか」
黒河は興味深そうに眉を吊り上げた。
「見せてもらったというより、勝手な推測です……やはり、両親を恨むようなことがあったのですか?」
「あったわよ」
黒河は嘆きながら、五本の砂糖を一斉にコーヒーに入れた。
「……」
「『あの件』を知った夜、彼は自分を警察署のトイレに閉じ込めていたの」
(引きこもりの原点は警察署のトイレか、なかなかやるじゃないか……って、感心する場合じゃない‼不謹慎だ!)
大介は急いで飛ばしすぎる脳電波を回収した。
14歳の悠治は自分を警察署のトイレに閉じ込めた。
大人たちからどんなに話をかけられても出てこなかった。
我慢の限界に、両親の「事件」の調査を担当する黒河は男子トイレに突入し、一蹴でトイレの鍵をぶっ壊した。
「いつまで引っ込んでるつもり?クソ親でもクズ男でもビッチ女でも、言いたいことがあったら大声であの二人に言え!」
「……」
便座の上で膝を抱え込む悠治はおどおど頭をあげて、驚愕と恐怖に震えた。
でも、すぐにまた引きこもった。
「……いまさら何を言う……どうせ、僕たちはどうでもいいものだ。ほっとけ……そのうち、どこかに消えるから……」
「『僕たち』とはなんだ?妹まで道ずれにするつもり!お前が立ち上がらなかったら、彼女はどうす